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術後創感染症ラウンド

術後創感染症ラウンドとは

平成17年卒業の松隈と申します。
肝胆膵グループに所属しており、肝臓、胆道、膵臓の病気の診療を主な仕事にしています。
今回は、臓器の担当領域を離れて、私が担当させていただいているもう一つの仕事、
術後創感染症ラウンドについて、ご紹介したいと思います。

私たち外科医は、患者さんに安全な手術を提供できるよう日々努力を重ねているわけですが、
100%合併症を無くすということは残念ながら達成できていません。
術後創感染症も数ある術後合併症の一つですが、最も多い合併症ともいえます。

厚生労働省の調査によれば、全国で行われた消化器外科領域手術の術後創感染症発生率は9.6%と発表されています。
消化管には常在菌と呼ばれる菌が存在し、手術では、これらの臓器を切ったり、つなげたりしますので、
術中にお腹の中や傷に菌が落ちてしまう可能性があるため、他の領域と比較し、術後創感染症は多く発生します。
消化器・腫瘍外科で扱っている、もう一つの領域、乳腺・甲状腺外科は、
消化器外科と比較し、「清潔な」臓器ですので、術後創感染症の発生率は低い傾向にあります。

さて術後創感染症は3つに分類されます。
お腹で説明すると、いわゆる皮の部分、医学用語では皮膚から皮下組織に発生する「表層切開創感染」、
筋肉の部分に発生する「深部切開創感染」、
そしてお腹の中に発生する「臓器・体腔感染」です。
手術の傷に「ばい菌」がついて傷が開くものだけが術後創感染症ではないのです。

術後創感染症ラウンドチーム

術後創感染症ラウンドチームは、消化器外科医、感染制御部医師、感染管理認定看護師、病棟看護師、薬剤師、細菌検査技師で構成しています。
チームの目的は、早期に術後創感染症を発見すること、そして術後創感染症が発生してしまった患者さんも早期に治癒に持ち込み、
元気に退院していただくことです。

チームでは、毎週火曜日に定期的なミーティングを行っています。
病棟のすべての患者さんをカルテレビューした後、
術後創感染症が発生している可能性がある患者さんには、実際に診察を行って処置が必要であれば、そのまま実施します。
担当医でもない医師が突然やってきて処置をされることを不快に思われる患者さんもいらっしゃるかもしれません。
しかし、昨今は外科医不足の折、担当医は他の業務に縛られ、早期の処置が困難なことが多々あります。
チーム医療の一環として、ご理解いただけますと幸いです。

表層・深部切開創の多くは、傷を開き、たまった膿を外に出すことで解決することがほとんどです。
一方、難渋することがあるのは臓器・体腔感染です。
それは膿を外に出すことが困難なことが多々あるためです。

さらに、臓器・体腔感染に対しては、抗菌薬(いわゆる抗生物質ですね)が必要になることが多いのですが、
近年は薬剤耐性菌という抗菌薬が効かない菌も増加してきていますので、抗菌薬の選択にも気を使います。
外科医は感染症の専門家ではありませんので、
感染制御部の医師や看護師、薬剤師、細菌検査技師の助言をもらいながら抗菌薬を選択し、
治療期間などについても適宜チームでも相談し、担当医にフィードバックしています。

主治医と患者さんという1対1の関係ではなく、多職種の専門家が色々な視点から患者さんに関わることで、
患者さんに元気に退院してもらいたい。
私たちの取り組みに、ご理解ご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

松隈 聰(平成17年卒)