医療コラム

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審査腹腔鏡

腹膜播種

消化器癌の中で、特に膵臓がんのおよそ70%の患者さんでは、診断時にリンパ節、肝臓、腹膜、肺などへ転移、
もしくは血管への腫瘍浸潤のため手術(切除)が不能であり、膵がん全体の5年生存率は10%以下と極めて予後不良であります。
その中でも腹膜播種(がん細胞が、種が播かれたように腹壁や腸管の表面に散らばる転移)の存在は、
予後を規定する重大な因子のひとつであり治療方針決定に際して腹膜播種診断がより重要となってきています。
しかしながら、CT、MRI、PET検査などによる画像検査では腹膜播種の診断率が高くありません。
その結果、手術時に遠隔転移(腹膜播種や肝転移)が診断され試験開腹(手術はせずにお腹を閉じること)となる症例も少なくありません。

審査腹腔鏡

審査腹腔鏡とは、お腹に5-12mmの穴を3-4か所開けてポートという筒状の器具を挿入し、
ポートから内視鏡(腹腔鏡)を挿入し腹腔内を直接観察し、
画像検査では分からない腹膜播種や肝表面の微小肝転移がないかを確認します。
肉眼では観察できない「がん細胞」を確認するために、
細胞診(お腹に水を入れて、かき混ぜた後に回収し顕微鏡で観察)を行います。
さらに疑わしい病変があれば生検(検査のために病変を一部切除し、顕微鏡で観察する)を行います。
審査腹腔鏡によって不要な開腹手術を回避できれば、
術後疼痛の軽減だけでなく、化学療法などのその後の有効な治療への早期転換が可能になります。

現在、当科では膵がんに対する審査腹腔鏡検査の臨床的意義に関する前向き観察研究を行っております。

(卒後18年目)