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お口の健康

「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」

私は主に食道と胃を専門としています。

食道や胃の手術をしますと胃が半分以上なくなってしまいます。

胃は主に食物を消化するための臓器ですので、胃がなくなってしまうと食べたものの消化が追い付かなくなり消化不良で嘔吐したり下痢をしたり腹痛が起きたりします(ダンピング症状)。
そのため術後はとにかくよく噛むことが重要で、今までの3倍以上噛んで食べることで食物が消化しやすい形態となり、食後のいやな症状の軽減につながります。

しかし、しっかり噛んで食べるためには、丈夫な歯と嚙む力がなくてはなりません。
食べこぼしや滑舌低下と言ったちょっとした口腔機能の虚弱(オーラルフレイル)が、
全身の虚弱につながるということで、「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という8020(ハチマルニイマル)運動も注目されています。
口の中にはおよそ400~700種類の細菌が住み、さらに歯垢1mgの中には約10億個の細菌が住みついていると言われ、むし歯や歯周病の原因になります。

歯周病は高齢者の死亡や術後の合併症につながる誤嚥性肺炎の原因となりますので、口腔内を清潔に保つことも重要です。

そのため当科では術前に歯科口腔外科と協力し、患者さんの口腔内衛生を改善し、また口腔機能評価を行うことで、術後の合併症の予防や生活の質の改善につながるよう診療を行っています。

術後も元気に生活するためには

我々が専門としている消化器外科で相手にしているのは、食物を消化、吸収、運搬する臓器ですので、これらに病気があると食べることができなくなってしまいます。
我々は主に「手術」により悪いところを取り除きまた食べられるように治療をしていますが、食のスタートである口が健康でないと、たとえ手術がうまくいっても患者さんは元気になりません。

手術を安全に乗り切り、術後も元気に生活するため、生きていくために基本となる「食べる」ということがしっかりできるよう、お口の健康にも気を付けていきましょう。