診療紹介|下部消化管(大腸)

大腸ー下部消化管

1.大腸癌

大腸癌の手術はほかの消化器癌に比べて定型的に根治手術が行いやすく、そのため腹腔鏡下手術がほかの癌に比べて早くから進歩しました。山口大学医学部付属病院第2外科では、ほとんどの結腸癌患者さんならびに直腸癌患者さんに腹腔鏡下手術を行っており、600例以上の経験を持っています。

日経新聞に掲載された腹腔鏡手術実力病院調査でも全国で15位と高い位置にあります。直腸癌では癌の根治手術は結腸癌よりも難易度が高く、以下に詳しく述べますように、膀胱機能や性機能の温存、肛門の温存などと言った手術後の生活に直接関わってくる重要な機能を損なわないように、かつ、癌をとり残さないような手術を行う必要があります。山口大学医学部付属病院第2外科は日経新聞によるがん治療の実力病院(全国調査において手術後の予後や患者数などを総合的に評価した疾患別調査)で結腸癌は41位、直腸がんは43位であり、全国水準としても高く評価されました。

1結腸癌

結腸癌の手術は直腸癌に比べて定型的に根治手術が行いやすく、ほとんどの患者さんに腹腔鏡下手術を行っています。
腹腔鏡手術が難しいとされている、おなかに傷のある患者さん、内臓脂肪の多い患者さん、大きな癌の患者さんに対しても、多くの場合腹腔鏡下手術が可能です。
まず腹腔鏡手術ができないかを試み、やはり手術が困難なときは無理をせずに、通常の大切開による開腹手術に切り替えるようにしています。

2直腸癌

直腸癌に対しても腹腔鏡手術が可能です。腹腔鏡手術では細いカメラで奥深くの組織を拡大して観察することが可能なため、むしろ開腹手術よりも安全に手術を行うことができると考えています。下部直腸癌に対して低位前方切除術を行った患者さんのご協力を得て、手術後2週間目のおなかの写真を掲載させていただきました。おへそ(写真の真ん中)の上に30㎜、右下腹部に12㎜、その他5㎜の傷が3箇所ありますが、しばらくするとほとんど見えなくなります。術後の痛みも少なく、小腸機能の障害も少ないため回復が早く、全身の炎症反応も軽く済み、術後の経過が楽であるのが特徴です。

直腸癌と聞いて、まず思い浮かべるのは「人工肛門」という言葉ではないかと思いますが、実際に人工肛門が必要になる患者さんはほとんどありません。もう一つ直腸がんの手術で重要なことは、これはあまり一般的には知られていませんが、膀胱と性機能の温存です。直腸の周りには膀胱と生殖器に行く神経が存在し、手術のときにこれを傷つけると、排尿や勃起・射精がしにくくなります。私たちは骨盤内の解剖を熟知した上で「癌を残さずに機能を残す手術」を行っています。

直腸癌に対する自律神経温存手術

下部直腸癌の根治手術では側方郭清と自律神経温存の二律背反性が問題になります。われわれは、術前の画像診断、組織診断、遺伝子診断などにより適応と術式を選択し、根治度を損なわずに神経温存手術を行い、術後のQOLを高める努力をしています。

直腸癌に対する肛門機能温存手術

膀胱・性機能と同様に自然肛門を温存できるか否かは、術後の生活の質に大きく関わってきます。私たちは教室で独自に開発したDST変法により縫合不全の起きにくい安全な結腸直腸吻合を行っています。また、内括約筋切除術(ISR)あるいは外括約筋を部分切除する超低位吻合・肛門機能温存手術も行っています。

2.進行性・転移性大腸癌の治療

大腸癌は手術によって完全に治癒する可能性の高い癌であり、たとえ肝臓や肺、腹膜などに転移しても手術で取り除けば治癒する可能性がかなりあります。また、抗癌剤の進歩も著しく切除不能となっても長期生存が可能となってきました。逆に言えば、かなりの専門的知識が無いと最高水準の治療が行えないということになります。山口大学医学部付属病院第2外科第2外科では関連病院の先生方とともに抗癌剤の研究にも力を入れています。以下、そのいくつかをご紹介いたします。

1個別化抗癌剤治療(個別化化学療法)

切除不能・再発大腸癌化学療法に対しては世界の趨勢に先んじるように心がけています。世界的に5FUは経口剤へ流れつつあり、これにイリノテカンやオキサリプラチンが併用されているのが現状ですが、いまだ個別化治療への流れは認められません。われわれは遺伝子多型を用い、患者個々における副作用予測を行った上で投与量を決めて治療を行っています。

2手術前の(放射線)化学療法

大腸癌では局所超進行がんでも遠隔転移や腹膜播種をきたさない症例が多く、局所制御は重要であります。局所超進行がんの切除時には、浸潤臓器の合併切除、癌細胞の播種、巨大腫瘍による視野の不良、などが問題になります。そこで教室では放射線科の協力を得て術前に腫瘍局所に限局させた放射線治療と化学療法の併用、あるいは抗EGFR抗体薬と化学療法の併用療法を行い、術野の確保、臓器合併切除の抑制、切除マージンの確保による癌細胞播種の防止に努めています。

3.炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)に対する外科治療

1潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は大腸に発生する原因不明の炎症性腸疾患です。内科的治療(保存的治療)は腸管の安静と、ペンタサ、ステロイドなどの薬物療法、白血球除去療法などがあげられ、10人中9人まではコントロール可能とされます。しかしながら、約一割の患者さんでは、中毒性巨大結腸症に至る劇症型、治療に反応しない難治性、再燃を繰り返し、入退院を余儀なくされる再燃緩解型、ステロイドから離脱できない持続型、などの理由により手術が必要となります。潰瘍性大腸炎は、大腸を主座とする疾患のため、大腸を全て切除すると完治する可能性が極めて高いといえます。しかしながら、大腸以外の合併症もいくつか報告され、これに関しては、大腸とは別に治療する必要があります。

手術に関して、大腸はおなかの周りをぐるりと取り囲むように存在するため、これを全て取り除くためには大きくおなかを切開する必要がありました。若い患者さんが多いことから、特に女性では大きな傷跡が気になることと考えられます。そこで私たちは、1994年から潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘術に対しても腹腔鏡を併用しています。腹腔鏡補助下に手術をすることで手術創は小さくなり、恥骨上8cmの横切開で手術可能となりました。今後腹腔鏡手術が進歩するに従い、最小3センチくらいの傷で大腸全摘手術を行うことが可能になると考えています。また、経腹的超低位吻合術(肛門管上縁ないし肛門管内吻合)の採用により合併症もほとんどなくなり、最近では症例を選んで一期手術を行い、良好な成績を得ていますが、ステロイドの使用などで術後合併症も少なくありません。

2クローン病

クローン病は口から肛門に至る全ての消化管(胃・小腸・大腸・肛門)に飛び飛びに発生する厄介な炎症性疾患です。治療の基本は、腸管の安静であり、点滴による絶食や成分栄養剤の治療が中心となります。また、ステロイドや抗TNF-α抗体などが、用いられることもあります。
病変が進行し内科的治療ではどうしようもないときにだけ手術となります。しかしながら、悪いところを取り除いてもまた他の所に発生する可能性が高く、クローン病に対する外科治療はきわめて控えめに行う必要があります。大きく切ってしまうと小腸や肛門の機能が失われるからです。また、複数回の手術が必要になる可能性があるため、可能であれば腹腔鏡の手術を行うことが望ましく、山口大学医学部付属病院第2外科では可能な限り腹腔鏡の手術を行っています。
術後に再発をきたすことが多いため、クローン病の治療は極力内科的に行うのが基本ですが、内科的治療のみでは腸管の狭窄や瘻孔が改善しないことやきわめて長い入院生活を必要とする場合があります。私たちは必要最低限の手術は躊躇うべきではないと考えており、外科手術が有効と考えたときには積極的に手術を行うことにしています。

4.年度別下部消化管症例数

5.大腸癌における実績

■大腸癌ステージ別生存率