研究内容|免疫学

免疫学

私たちの教室では消化器がんや乳がんなどの治療を行っています。最も効果的な治療は外科手術ですが、メスだけでは治らない患者さんに対しては化学療法や放射線療法を行っています。しかしこれらの集学的治療によってもすべての方が治るわけではありません。

そこで私たち、患者さん自身が本来持っているがんに対する免疫を高め、免疫の力でがんを治す研究を30年以上続けてきました。がん免疫療法には、腫瘍抗原に対して特異的な免疫療法と非特異的な免疫療法があります。最近では腫瘍抗原を認識する特異的な免疫療法が特に進歩しました。しかしがん細胞は身を守るために、がんを攻撃する免疫細胞を抑制して免疫監視機構から逃避する様々な方法を持っています。そのため、特異的な免疫療法だけでなく、非特異的なもの、すなわち抑制された免疫を回復させる治療法を組み合わせる必要があります。免疫チェックポイント阻害剤は最近最も注目されている抑制性免疫を解除する薬剤です。

以下に私たちが行ってきた免疫療法と、これから開発していこうとする免疫療法について記載します。

がんペプチドワクチン療法

教室では腫瘍抗原ペプチドを免疫賦活剤とともに皮下投与し生体内でがん特異免疫を誘導するペプチド療法の開発を行ってきました。また、平成23年度には厚生労働省対がん10カ年計画の一環として難治がんに対する医師主導型治験を公募するプロジェクトに採択されました。未治療の切除不能膵がんを対象として、ゲムシタビンとペプチドワクチン療法を併用する第Ⅱ相試験を医師主導型治験として教室が調整機関として実施し、多くの施設と多くの先生方のご協力を得て予定された症例数の登録が完了しています。平成27年度には総括報告書をPMDAに提出しますが、この結果から大規模な第Ⅲ相試験を実施するか否かの判断が下されることになります。

また、新しい腫瘍抗原由来ペプチドの同定や、抗腫瘍免疫能を高める補助療法の開発を免疫学の玉田教授や企業との共同研究で行い、次世代型ペプチドワクチン療法の開発を進めています。このような研究の成果から日本発のペプチドワクチンするため、臨床試験を開始いたしました。

細胞療法
※現在、臨床研究を新たに準備中のため、本治療の新規患者登録は行っておりません

教室では、膵がんに発現しているMUC1抗原を試験管内で認識させ活性化したリンパ球を静脈内投与するMUC1-CTL療法を先進医療として行ってきました。さらに強力な抗原提示能を持つ樹状細胞 (DC) を用いて、MUC1抗原のmRNAを導入したDCを皮内投与する樹状細胞療法を開発・臨床応用してきました。

また、肝細胞がん (HCC) のプロテオミクス解析(下図)や血中抗HSP70抗体測定から、HCCに対する分子標的としてヒートショックプロテイン(HSP)の一つであるHSP70がHCCで高発現していることに注目し、HSP70mRNAを導入した樹状細胞を用いた第I相試験を施行したところ、腫瘍が消失した2例を含め、良好な抗腫瘍効果と安全性が確認されました。さらに、HCC手術後の再発予防を目的とした第Ⅱ相試験としてHSP70mRNA導入DC療法を行い効果を検討中です。

HCCのプロテオーム解析

がん免疫病態

私たちは文部科学省(H27年度から日本医療研究開発機構(AMED))の次世代がん研究シーズ戦略的育成プログラム(P-DIRECT)に参加して「免疫療法のバイオマーカー」をテーマにがん患者の免疫動態と免疫療法の効果について、慶應大学、近畿大学、シカゴ大学(下図 上)との共同研究を行う機会を得ました。がん病態を解明することにより、どの様な病態の患者に免疫療法がよく効くのか、どの様な病態が免疫療法の効果を下げているのか、どうすればその病態を克服することができるのか、などを多数の免疫療法を行った患者で解析し、効果のある患者さんを選択する指標を見つけました(下図 下)。さらに効果を高める併用療法を見いだす、免疫抑制を解除する薬剤を開発する、などにより真に効果的な複合免疫療法の開発を目指しています。

治療前 IL-6と予後